根掛かり人生 vol.1

北方ジャーナル』では釣りのコラム『根掛かり人生 ~今日も地球を釣っています…~』も書いてます。

そのバックナンバーの転載も編集長の許可を得たのでこのブログにアップします。

『僕の妻、乳がんになる』の記事ばかり上げると重くもなっちゃうので^^;


連載を始めたのは2016年5月号から。ですので、もう2年くらいになりますね。

前回ブログで「私的なことを書くのは抵抗があった」みたいなことを書きましたが、これも思い切り「私的なこと」ですね。でも、なんというか同じプライベートでも質が違うといいますか、このコラムは軽く笑って読んでもらいたいというか、北海道の釣り人口を考えたら釣りネタは避けちゃいけないんじゃないかなと編集長と話して、うちの雑誌なりの釣りコラムをと始めた次第です。


では、2016年5月号の第1回を。

vol.1

その後の釣りのすべてを 

物語る人生最初の釣り

何を揃えれば良いのやら… 

 「釣りがしたいっ!」  ある日のこと、虫や動物など生き物全般が好きな息子(10)が珍しくおねだりをしてきた。僕が釣りを始めたきっかけである。

  しかし、釣りって何が必要なんだ? どこで釣るんだ? とりあえずネットで「釣り 初心者」を検索。すると出てくるわ出てくるわ、「ビギナー入門講座」の数々が。イロイロ眺めてみるとビギナーには「サビキ釣り」というものがオススメらしい。そして、家族連れにはぜひ「磯釣り」をオススメしたい──。そんなことが書かれていた。

  今にして思うとまったくの初心者に磯釣りとはなんとハードな推薦だと笑っちゃうのだけれど、何もわからぬ僕は「釣り初心者はまず磯でサビキ釣り」とふたつのオススメを合体して解釈したのであった。

 そうと決まれば次は道具の購入。そういえば、近頃はホームセンターで釣具が売られていたなと思い出し、買い物ついでに物色してみると、安いものは想像以上にお安いっ! 

「万能竿」と書かれた小さな竿がリールとセットで2千円もしないで買えてしまう。子供が扱いやすそうな大きさだし安いしコレでいいべと娘(12)と息子の分を買い、僕は彼らよりちょっと高い投げ竿セット、お値段3千円を購入。仕掛けもこれさえあればサビキ釣りができるという「サビキセット」を1人1セットずつ買った。安物で揃えたとはいえ、家族3人でおよそ9千円の出費。ずいぶん高価な魚となりそうだ。大事に食わねば。いったい何が釣れるのだろう、むふふふ。まだ釣ってもいないのに出費分以上に期待だけは膨らむのであった。

  そして、忘れもしない2015年7月24日。他の釣り人に迷惑はかけたくないし、何もわからないのを見られると恥ずかしいからという理由で僕と娘、息子の3人は自宅近くの誰もいない浜へ出かけた。いよいよ初釣行なのである。ピッカピカの竿に仕掛けを取り付けて、エサカゴにエサを詰める。子供たちはまだ仕掛けをつけていない竿を使ってキャストの練習に余念がない。目線は上方斜め45度。変に力むことなく、竿のしなりを利用して投げるのがコツ。子供たちはさすが父ちゃん! みたいな顔をして僕のアドバイスを聴いていたが、ネットで書かれていたことをそのまんま話していただけなのである。僕はまだ一度も釣竿を振ったことがないのであった。

 初釣行……?

  釣りをやりたいと言い出したのは息子であった。そうだ、家族最初の一投はお前がやってみろ。息子の人生初キャストを娘と僕の2人で見守ることにした。前の晩から楽しみで眠れなかったという息子。今日も朝から竿を降って練習していた息子。今でも釣りを続けているがこのときほど真剣に投げた彼の姿を見たことがない。


 シュッ! 


「あ……」


 ポチャン…。


  一瞬の出来事であった。竿が振られたと思った瞬間、サビキ仕掛けだけがあらぬ方向に飛んでいき海に沈んだ。仕掛けと釣り糸がしっかり結べていなかったのだ。息子は手ごたえのないリールを巻き、その先に何も付いていない釣り糸を呆然と眺めていた。用意した仕掛けは1人1セット。息子の初釣行終了である。

  同じ轍は踏むまいと娘の仕掛けはグリグリに結んだ。結び方などわからないけれど、とにかく丈夫に結びまくった。振りかぶる娘。姉の底力を見せるときである。振りかぶったままの娘。…おい、どうした。

  サビキ仕掛けというのは疑似餌の針が5~10本付いた仕掛けのことで、エサカゴやオモリも付くのでそれなりに長さのある仕掛けだ。そして子供らに用意した竿は非常に短いものだった。娘が振りかぶったとき、磯の石に引っかかったのはごく自然な成り行きだった。釣りというのはつくづく面倒な趣味だな、と引っかかりを解こうとして竿を引くと…。


 ブチッ!


 「あ……」

  用意した仕掛けは1人1セット。娘の初釣行終了である。

  残るは父である僕一人??。ここは父の威厳を示さねばなるまい。結び目ヨーシ! 後方ヨーシ! と、わが子らの失敗を踏み台にしつつ力まないようにキャストしてみた。

  スルスルとまっすぐ前方15mほど飛んでいくサビキ仕掛け。

 「オオー!」

  子供たちが歓声を上げる。でも、ただ仕掛けを投げただけである。魚は釣れていない。というか、違うものが釣れている。

 「あ、なんか引っかかった」

  地球が釣れていた。いわゆる根掛かりである。これじゃあ魚は釣れないだろうと地球相手に真剣勝負を挑む。リールは目一杯巻いて竿を持つ手に力を入れる…。


 ブチッ!


 「あ……」


  用意した仕掛けは1人1セット。僕の初釣行終了である。しょっぱなから根掛かりで始まった釣り人生なのであった。僕ら家族の初釣行はものの10分で終わった。誰もいない浜に行くのに片道30分は歩いたのに。 

「磯って来てみると気持ちいいねぇ。いいお散歩になったよねぇ」 「おっ! カニだぁ! ねぇねぇ持って帰っていい? 来て良かったー!」

  磯釣りはたとえ釣れなくても子供にとっては自然がいっぱいで楽しいからオススメですよと、ネットでの名人様がおっしゃってた。たしかにその通りだけど、明らかに父親に気を遣って言ってるよな、お前ら。でも、わが子ながらイイヤツだな、お前ら。

  ちなみに、サビキ釣りというのは堤防などある程度水深のあるところでやるもので、一般的には仕掛けを投げたりしません。深さのあるところに垂らすのです。そこんところ、賢明な釣り初心者は読み逃さないように。決して水深2mにも満たない磯に投げてはいけません。海のゴミを増やすだけです。海、ゴメン。反省しています。

  こんなバカ釣り人である僕らが魚を釣れるようになるまでどんな紆余曲折があったのか。そんな成長過程や失敗談をこのコラムでは綴っていきたいと思っております。魚のように生温かく見守ってくれると幸いです。魚って触ってみると生温かいのよ、これが。 釣りを始めるまで魚は冷たいものだとばかり思ってたわ!


(『北方ジャーナル2016年5月号』掲載)

 ※無断転載を禁じます。(C)Re Studio 2016年




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